もくじ
ボードゲームが流行っています
ここ最近ボードゲームが流行っている。
念のためにボードゲームとは、その名のとおり「盤(ボード)上で遊ぶゲーム」の総称である。さらに、「電源を必要としない」1)「ゲームマーケット」の公式HPには「ゲームマーケットは“電源を使用しない”アナログゲームの振興とユーザの交流を目的とした『みんなでたのしく』過ごせるイベントです」とある。ことも要件に入るため、テレビゲームの対として「アナログゲーム」と呼ばれることもある2)そのほか、「テーブルゲーム」と呼ばれることも。サッカーや野球など体を動かすスポーツ3)あえて「体を動かす」といっているのは、英語の「スポーツ」の原義は「気晴らし」であり、遊戯全般を指しうるからである。は、盤上でできないから、ボードゲームではない。そしてPS4とかSwitchとかは、電源を必要とするから、言い換えればアナログでないから、ボードゲームではない。
悪い癖で回りくどくなった。要するにボードゲームとはすごろくとかカードゲームとかの類で、もっと具体的にいえば人生ゲームとかトランプのことである。

で、大体の人が人生ゲームとかトランプ…あとUNOとかならやったことがあると思うけれど、実はボードゲームとはもっともっといっぱい種類があって、それらをプレイすることが今流行っていますよ、とそういう話です。
流行っている、というのは単なる個人的な感想ではない。日本最大のボードゲーム(アナログゲーム)イベントであるゲームマーケットは2000年から開催されているが、下の表のとおり来場者数は年々増加している。
特に注目の点は、10,000人という大台に乗るまでに16年かかったにもかかわらず、ここわずか2年で倍の20,000人に到達していることである。もちろん開催が2日間になったことが大きいのだろうが、そもそも2日間の開催が可能であるということはそれだけ参加者が増加しているからだろう。

ゲームマーケット公式HP内「過去の開催データ」より作成。2017秋、2018春は2日間の日程となっており、青が一日目、橙が二日目の数を表す。
また、ボードゲーム専門ショップであるすごろくやも、2006年に高円寺に開店し、2018年4月には神田神保町店がオープン。
さらに、ボードゲームを借りてその場でプレイできるボードゲームカフェというものも近年生まれており、その中でも店舗数最多4)筆者調べ。ほんとは違うかものJELLY JELLY CAFEは2011年に渋谷で第一号店を開店してから現在までに名古屋・福岡を含めた8店舗で営業しており、2018年度中にはさらに2店舗が開店を予定している、という盛況ぶりである。
以上のことから、客観的にも、ボードゲームは2000年代後半あたりからじわじわと人気が出始め、特にここ数年でムーブメントが拡大している、といってよいだろう。
そういうわけだから、ボードゲームの波が最近筆者のところに押し寄せてきたということも特段不思議なことではないのである。で、やってみたら面白かったのでそれ以来ちょくちょくボードゲームを買っては知人と遊んでいる。さらに、筆者は先日引っ越したのだが、引っ越し先から「すごろくや」の神田神保町店まで徒歩5分くらいで行けてしまうという事情もあって、今後もどんどんボードゲームが増えていくと思われる。これから、当ブログにもルールやプレイ感想を掲載していく所存である。
「モダン・アート」を遊ぶ
「モダン・アート」とは
ボードゲームを全然知らない人にとっては聞いたことがないだろうが、ボードゲーム界のなかでは「モダン・アート」は定番というか、古典的な作品のようだ。こちらによれば、初版が出たのが1992年で、その後いろいろなバージョンが発売されているらしい。バージョンがいろいろあるとはいっても、見たところイラストに違いがあるだけで、ルールは同じようだ。(以下で説明するが、このゲーム、絵を競りにかけて儲けを競うというルールなので、絵のイラストは実はどうでもいい。皮肉なことに。)
筆者は2014年発売の日本語版を購入。「すごろくや」神田神保町店で税込み3,000円でした。

ルールの類型
ボードゲームは数あれど、ゲームシステムをいくらか類型化することはできる。「システム」といってもそれをどれくらいの細かさでみるかによるけれど、とにかくそれらのボードゲームにおけるシステムのことを「メカニクス」というらしい。
で、そのメカニクスのなかには「オークション(競り)」というものもあるのだが、「モダン・アート」はこの典型である。
プレイヤーは絵の入札権者であり自分の手番では競売人でもある。入札者としては、価値のある絵をできるだけ安く買う、競売人としてはなるべく高い値段で売ることで蓄財していき、最終的に一番所持金の多かったプレイヤーが勝利する。
ただしここでいう「絵の価値」は、もともと決まっているわけではなく、競売にかけられる絵の枚数に依存するため、状況に応じて変動する。場に出されたカードの種類をよくみて適切な額で競売・入札・落札を行うことが重要なのである。
というとなんだか難しそうだが、一度覚えてしまえば非常に簡単なルールかつ面白いので、オークションタイプのゲームの入門としてぜひ遊んでみることをおすすめする。
ちなみに、箱にも書いてあることだが、プレイヤー人数は3~5人、プレイ時間は45分~60分。
ゲームの流れ
付属のルールブックがある。あるが・・・個人的にはわかりにくい。いや、ルールはもちろん必要十分の内容が書いてあるのだが、実際のゲームの流れがわかりにくいので初回プレイ時はどこからどうやって手を付けていけばいいかよくわからないのである。
ということで、ここでは実際のプレイの順に従って説明していく。
0 準備
まずは絵の描かれたゲーム盤を広げる。また、各プレイヤーは、都市の名前が書かれたついたてを、自分の前に立てる。それぞれの都市の画商という設定なんでしょうね。たぶん。
さらに、各プレイヤーに$100,000ずつ配る。配られたら、コインはついたての裏に隠す。つまり、誰がどれだけお金を持っているかはわからない状態でゲームは進んでいくということ(まあ、すべてのお金のやりとりは公開されるため、相手プレイヤーの残高を追うことは不可能ではないですが、たぶんその余裕はないです。自分の残高さえ把握が追い付かないと思います)。
残りのコインは、ストックとして皆が取りやすい場所においておく。
1 カードを配る
なにはともあれカードを配る。
配る枚数は、
3人プレイ・・・10枚
4人プレイ・・・9枚
5人プレイ・・・8枚
結構多くのカードが配られる。
配って余ったカードは、残り札として適当な場所に置く。これはしばらく使わない。
さてカードは正式には「絵画カード」といい、配られたカードがそのプレイヤーが競りにかけることのできる絵を表している。
各絵画カードの持つ属性は2つで、
ひとつは「画家」。これはカードの縁の色に対応している。種類はベージュ、緑、濃いピンク、青、薄いピンクの5種類。同じ色のカードは同じ画家の作品ということ。ルールブックなどでは「同じ画家の~」という表現が使われるが、少々わかりにくいので以下では「同じ色の~」という表現を使う。
もうひとつは、「オークション形式」。これは、カードの四隅に書かれたマークに対応していて、そのカードが競りにかけられたときにどのような形式のオークションで競りが行われるかを示している。それぞれの内容は後述。
ここまでで、盤上は下のようになっているはず。

それぞれ、これまで説明してきた何と対応しているかというと

こうなる。(ただし、本当はコインはこの時点でついたての裏に置くべき。また、手前のプレイヤー(筆者)の手札が写っていないが、撮影角度のせいで、実際は配られてはいる)
2 競売人によるカードの売り出し
いよいよ本格的にゲームスタート。まずは適当にプレイヤーのなかから一番手を決める。
決まったら、その人は「競売人」となる。「競売人」は、手札からカードを一枚場に出す。これが、「競売人」が絵を「売り出した」ということであり、その絵を巡ってオークションが開催される。
オークションの形式は5通りあり、どの方式で行うかは、売り出されたカードの四隅にあるマークに依存する。マークはルールーブックを見ればわかるから、ここではそれぞれの内容だけ簡単に書く。
①公開競り | 全プレイヤーが口々に金額を言い合い、最も金額を高くつけたプレイヤーが購入できる。金額は何回言い直しても良く、発言タイミングも順番などは関係ない。よくあるオークションのイメージ。 |
②一声 | 競売人の左隣のプレイヤ―がまず値を付ける。その次に、その左隣のプレイヤーがそれより高い値段を宣言する…これを時計回りに競売人まで続け、最高値をつけたプレイヤーが購入できる。パスも可。 |
③入札 | 全プレイヤーが手にコインを握って中央に出す。競売人の掛け声で一斉に手を開き、最高値を付けたプレイヤーが購入できる。握った手の中にコインがなくてもよい。最高値が複数存在する場合は競売人を最優先として、競売人から時計回りに近いプレイヤーが優先。 |
④指し値 | 競売人が出した絵の値段を宣言。左隣のプレイヤーから順に、購入する権利がある。パスも可。なお全員がパスした場合は競売人が購入しなければならない。 |
⑤ダブルオークション | このカードに続けて競売人はもう一枚カードを出せる。この時出せる二枚目のカードの条件は、⑴一枚目と同じ色のカードである ⑵ダブルオークションではない の2つ。二枚目が出されたら、二枚目のカードに示された形式でオークションを行い、競り勝ったプレイヤーが二枚ともカードを獲得する。なお、競売人は二枚目のカードを出さなくても、出せなくても構わない。その場合は左隣のプレイヤーに二枚目のカードを出す権利が与えられ、当該オークションの競売人はその二枚目のカードを出したプレイヤーが行う。左隣のプレイヤーが二枚目のカードを出さなかったあるいは出せなかった場合は、この権利はさらに左隣のプレイヤーに移行する。 |
- 上の表でいう「全プレイヤー」には、競売人も含む。
- 値が付かなかった場合(”①公開競り”で誰も発言しない、”②一声”で全員がパスした、”③入札”で全員が$0入札した(=誰もコインを握っていなかった)、”⑤ダブルオークション”で二枚目のカードを誰も出さなかった、のいずれかの場合)には、競売人が無料で絵画カードを取得できる。
一人のオークションが終わったら、時計回りに次のプレイヤーが競売人となって、同様にオークションを行う。これを繰り返す。
3 オークションの終了
上記を続けて、同じ色のカードが5枚出た時点で、即座に換金フェイズに移行する(当該5枚目のオークションは行わない)。
- 当該5枚目が”⑤ダブルオークション”であっても、即座に換金フェイズに移行するので2枚目を出すことはできない。
- 同じ色のカードの4枚目が”⑤ダブルオークション”で、それによって同じ色の5枚目のカードが場に出た場合でも、即座に換金フェイズに移行するので、5枚目の示すオークションは行われない。
4 換金
たくさん買われた絵は、人気があるということなので、価値が高い。
というわけで、場に出されたカードの枚数に応じてゲーム盤のそれぞれの色の所定の位置に「市場価値チップ」を置く。1番多く出されたカード(=1位)には$30,000の市場価値チップ、2位には$20,000、3位には$10,000のチップを置く。これはそれぞれ、「1位の色の絵は1枚につき$30,000、2位の絵は1枚につき$20,000、3位の絵は1枚につき$10,000の価値がある」ことを示している。なお4位以下の色のカードには価値はつかない。
- 場に出たカードの色が2種類以下であるとき(つまり3位まで順位がつかないとき)、つかない順位は空席となる。つまり”1位だけしか値がつかず2位、3位がない”あるいは”1位、2位は存在するが3位が存在しない”ことは起こりうる。
- 場に出たカードが同数(ただし0でない)のとき、ゲーム盤上で左側に位置している色に優先して順位がつく(左方優先)。具体的には、ベージュ>緑>濃いピンク>青>薄いピンク。
- 左方優先ルールの調整として、もともと絵画カードの枚数はベージュが一番少ない12枚で、右にいくにつれて1枚ずつ増え、薄いピンクは16枚ある。
各プレイヤーは”ついた価値 × 購入した絵画の枚数”を掛けて得られた分の額をストックから得る。
購入したカードはゲームから除外する。残った手札は次のラウンドに持ち越す。
5 ラウンドの終了
さて、ここまでで1ラウンドである。
あとはこれと同じことを繰り返して、4ラウンドが終了した時点でゲーム終了となり、所持金が一番多かったプレイヤーが勝者となる。
ただし1ラウンドと2ラウンド以降では少しだけ違うことがあるのでそれを列挙する。
6 2ラウンド以降の相違点
- ラウンド最初に前ラウンドまでの残り札から配るカードの枚数はラウンドによって異なる。
2ラウンド 3ラウンド 4ラウンド 3人プレイ・・・6枚
4人プレイ・・・4枚
5人プレイ・・・3枚3人プレイ・・・6枚
4人プレイ・・・4枚
5人プレイ・・・3枚配布なし - 前ラウンドの最後の競売人の左隣のプレイヤーが次ラウンドの最初の競売人となる。
- ゲーム中に手札が尽きたプレイヤーは、競売人の順番を飛ばされる。ただし、オークションには参加できる。
- 全員の手札が尽きた場合、最後の1枚が出されたとき即座にラウンド終了となる。
- 換金フェイズで市場価値を決定する際、当ラウンドで値がついた色の値は、前ラウンドにおける値との合計の額となる。
具体的には、例えば1ラウンドで薄いピンクが1位となり$30,000の値がついて、次の2ラウンドでは2位になったとき、2ラウンド換金フェイズにおける価値は$30,000+$20,000=$50,000となる。しかし、3ラウンドで値が付かなかった場合、3ラウンド換金フェイズにおける緑の価値は$0であり、4ラウンドで1位になった場合は、4ラウンド換金フェイズにおける緑の価値は$0+30,000=$30,000である。
例:ベージュ 緑 濃いピンク 青 薄いピンク 1ラウンド $20,000 $10,000 $30,000 価値(1R換金時) $0 $20,000 $10,000 $0 $30,000 2ラウンド $30,000 $10,000 $20,000 価値(2R換金時) $30,000 $30,000 $0 $0 $50,000 3ラウンド $10,000 $30,000 $20,000 価値(3R換金時) $40,000 $60,000 $0 $20,000 $0 4ラウンド $10,000 $20,000 $30,000 価値(4R換金時) $0 $70,000 $0 $40,000 $30,000
戦術
恥ずかしながら、1度しかプレイしていないので、戦術というほどのものは発見できていないのだが、
言うまでもなくお金を稼ぐ手段は2通りで
①競売人となって絵を売って得る
②換金フェイズで絵を換金して得る
なのだが、競売人になることよりもオークションに参加することの方が多いせいか、②の方に意識がいってしまいがちだが、①も重要な資金獲得手段であり、何より①はストックからではなく他プレイヤーから資金が自分のところに移動するわけなので、勝利に結びつきやすい。大切なのは競りに勝つことではなくお金を稼ぐことなのだ。
また、競りの方法についても、「”⑤ダブルオークション”が同色の価値向上に影響が大きい」くらいはわかるが、そのほかの形式は特に意識せず適当に選んでしまっているのが現状だが、よく考えるとそれぞれ値付けの方法が似ているようで差異がある。
例えば、①絵の購入額を競売者が介入できる度合い ②競売者自身が絵を購入できる可能性 という2つの観点からみると、それぞれ以下のようになるだろう。
①額介入可能性 | ②購入可能性 | |
①公開競り | △ | 〇 |
②一声 | × | 〇 |
③入札 | 〇 | △ |
④指し値 | ◎ | × |
◎〇△×の基準は曖昧だが、ともかくオークションによって微妙に駆け引きの仕方が異なるので、それを利用してうまく他プレイヤーに損をさせることが、コツのような気がする。
あと、「ルールブックにはさらっと書いてあるけど実は非常に重要」という要素がいくつかあるのでそれにはこの色のマーカーを引いておいたのでプレイ時には再確認してほしい。
ルール説明に間違い、不足があったらすみません、どうせ机上の暴論です。
References
1. | ↑ | 「ゲームマーケット」の公式HPには「ゲームマーケットは“電源を使用しない”アナログゲームの振興とユーザの交流を目的とした『みんなでたのしく』過ごせるイベントです」とある。 |
2. | ↑ | そのほか、「テーブルゲーム」と呼ばれることも |
3. | ↑ | あえて「体を動かす」といっているのは、英語の「スポーツ」の原義は「気晴らし」であり、遊戯全般を指しうるからである。 |
4. | ↑ | 筆者調べ。ほんとは違うかも |